『認知症の人の心の中はどうなっているのか』
認知症の人と何を話せばいいのか。同じ話を繰り返す。家に帰りたいと言う。言っても理解されない。介護者の意図が伝わらない...認知症の人とのコミュニケーションは難しいという先入観や実体験があります。でも、本当のところ、認知症の人はどう感じているのかなどを、最新の研究踏まえて、実際にどういうコミュニケーションがあるかを示してくれています。
テレノイドというちょっと不気味な外観のロボットを使うと、驚くほど会話をする方もいます。認知症の症状の特性から、外観が無機質のテレノイドに自分の中の誰かを投影させたりし、誰か分からないというような不安を払拭し、会話ができるというものでした。
認知症の人の特徴として、
①相手の気持ちを読めない
怒り、悲しみを読み取れず、嫌悪、驚き、喜びは読み取れるというものがあります。嫌悪を前面に感じ嫌われていると感じることが多いとのことです。
②第一印象を変えられない
一旦思い込むと容易に変わらないので、こちらこを信用してもらうには笑顔で接して第一印象をまずはよくしておくことが大事です。
③周囲の人を個人として認識出来ない
集団として周りを捉えている限り、敵意や疎外感を抱いていると思われます。介護者が個人として認識されれば、安心や信頼に変わる可能性があります。そのためにはコミュニケーションが大事なのです。
実際の現場ではコミュニケーションは少ないという調査結果もあり、介護職員が利用者との会話は業務時間の1%、しかも会話内容の77%は介助の際の声掛け、日常会話は15%だそうです。認知症の利用者は日常会話をする機会が少ないから話さないということを示したデータです。話せないから話さないのではなく、話す機会がないから話さない。
また、夕暮れ徘徊と呼ばれる「家に帰りたい」という訴えは「ここにいたくない」と解釈し、「ここにいたい」に変わるように居心地のよい場所変えて行くことが必要とし、コミュニケーションのあり方を考えさせられました。
著者は認知機能がどのような状態かを日常会話によって特徴を捉える「CANDy」を開発しています。
単に今日がいつかとか、計算問題、覚えた単語を思い出す問題で認知機能を測るのではないので、介護社、当事者双方に負担が少なくこれを活用して今の状態を把握し、適した会話ができるというものです。