介護士シュカの読書メモ

認知症、介護の本etc... 読んでみた

『認知症世界の歩き方』

 

認知症になったとき、今まで当たり前にできていたことが出来なくなるのです。

見えなくなると記憶から消える、皮膚感覚が変化し、異常に寒い、数えられない、物が使えない、時間が分からないなど、普段無意識でしていたことが出来なくなるのです。

そうした体験を元に、認知症になったらこの世界はどう感じるかということを分類し、旅行ガイドブック「世界の歩き方』のパロディ的にまとめています。読みやすく、認知症野方が見える感じる現実はこういうことかと実感しやすいと感じます。だからいわゆる問題行動(BPSD)に見えるということなのです。

それにしても、自分が思っている。見えている現実が他人にはわかってもらえない、間違ってると言われるのは非常に苦痛でしょう。理解されず苛立つと更に周りから「認知症」だからおかしい、めんどくさい、迷惑行動と言われてしまうのです。忘れないようにメモを書いても書いた記憶がない、書いた字が読めない、内容に意味を見いだせない世界に、どうやって合わせていくか、周りの理解と協力がやはり必要です。

自分自身がそうだったら、と思って読むとより実感できると思います。

日常の無意識でできていることをひとつずつ分解して行くと複雑で高度な認知作業だと感じました。

シュカ's MEMO

認知症当事者の世界はSFという感じです。

自宅なのにドアの向こうが想像出来ない、書いた文字が判読出来ない、食べ物が変な味がする、お風呂の湯がぬるぬるする、巨大なクモなどが見える...自分にはそう感じられるのに、周り人は全然当たり前だと思っている。気づけば、家族も自分の家族かどうか分からない...

こう感じることを理解しながら、このSF世界を生きる手助け、何ができるだろうと、改めて考えました。

 

『非正規介護職員ヨボヨボ日記』

 

50代半ばにて初任者研修を受講し、介護職員になった真山氏の実体験。

関わった利用者さんの様子がリアルに描かれている。著者自身は色々な職業を経験し、社長、オーナーと言われる立場の時もあったが、曰く失敗しハローワークで研修を受け、非正規で介護職員をしているとにこと。「この仕事に生きがいを感じ始めた、なんてことは全くない」とカバー折り返しに書かれています。

排泄介助のリアル、利用者が話し続ける自慢話、利用者から野セクハラにモンスターファミリー。淡々と接している様子に感じられる文体という印象。古参の施設の職員(この人がいないと回らない御局様のため、いじめ、パワハラに行うものの、施設長は注意できない)への不満もリアル。どこでもこういう人がいてみんな辞めていくと言う。ただ、実際の仕事はできる人物で、フォロー的なコメントもあります。

シュカ's MEMO

淡々と利用者、職員の様子が書かれていて、介護が辛い大変という印象でもないけれど、こういうことがあるんですよ、という著者の「日記」という感じがしました。

介護を通じて感じて感じたことが少しずつ伝わります。

誰でも最初は初心者。そこで何を見て何を感じるか、ベテランの見方とは違ったものがあります。色々な人と色々な人生の関わりが垣間見れます。

良かった、いい話とまとめるのではなく、見た出来事という感じです。

彼らの人生に触れられることが喜びなのだ(あとがきP204)

私もこのあとがきに共感しています。介護の仕事とは、そこに興味を抱くか否かで違って来ると感じました。

 

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『認知症の人がスッと落ち着く言葉がけ』

 

認知症の人は言い分を曲げないの認知症の脳が作り出した世界にいるから。認知症の人は自分が思っている世界が本当の世界なので、ご飯はさっき食べたとか、もう退職して働いてないとか、お風呂にしばらく入ってないとかいう否定をしても、受け入れません。認知症の人に現実、事実を伝えても納得しないのです。

そういう人にどう対応してきたか、実例を多く紹介しています。記憶を足していき人格となる世界(足し算)ではなく、記憶が失われていく世界(引き算)に合わせた対応を、と表現されています。

 

コウイチさんの事例は初期のデイサービス通い始めの誘い方から始まり、過ごし方から中期、後期と症状が進んだ認知症の方への対応の変化が書かれています。大変興味深く感じました。初期は何かおかしいという自覚症状やプライドはありますが、中期になると排泄の失敗、徘徊するようになり、後期には暴力、制御不能行動などを経て入院。穏やかな様子になるが、誰だかわからなくなる、言葉が出なくなり徐々に寝たきりになって亡くなるという経過でした。

 

また体に刻み込まれていることは忘れない、繰り返すと「体に刻み込まれた」ようになる事例も紹介されていました。


認知症の人と関わる三原則「おどかない」「追いつめない」「おびえない」~認知症の人ー家族ー介護職は互いに誰かの心理が反映する(p142-143)も忘れないでおきたいところです。

シュカ's MEMO 

体に刻み込む、利用者が受け入れるような状況を何度も行うことは有効かも?

入浴拒否、乗車に時間がかかるなどの人が「納得」するような状況設定でうまく

声かけ、誘導を繰り返すと、して頂けるようになるのかなと。

ついでながら、こういう事例の本も何度か再読して、ああいうやり方があったとなんとなく覚えておくのがいい方法だと、再読して思いました。結構忘れてしまうものです。

『マンガでわかる!認知症の人が見ている世界』

見開き2〜4ページのマンガ、続く見開き2ページで解説と解決例、対応のポイントを箇条書きでまとめてあり、わかりやすく読みやすい構成です。

マンガでは介護者が見えている世界と認知症の方が見ている世界の2部構成です。介護者は苛立ち、困惑しています。実際に認知症の方には自分なりに認識し物事を遂行しようとしていることがよくわかります。同時に、認知症の方の不安や苦しみもわかりやすく描かれています。例えば場所がわからなくなる(見当識障害)、物盗られ妄想などのほか、暴言、運転をやめないという介護者が遭遇する困りごとを多く取り上げています。認知症の方への理解が深まり、どう接したらいいかのヒントを得られる内容です。

「いずれは進行する病気」という心がまえを持ち、寛容になる事も大切です(P63)

相手に苛立ちなどの感情をぶつけるのではなく、優しくわかりやすくゆっくりと接すること、共感して話に耳を傾けることの大切さを解説してあります。

今日からできること、やってみようと思うことも多く載せられています。

認知症の方の対応として重要なのは「安心できる環境」「安心して過ごせる時間」。そして、寄り添いとは、時間・場所・感情を共有することです(P160)

シュカ's  MEMO  ☆寄り添うとはよく言われますが、感情を共有できてなければただの付き添い。
認知症の方との会話の話題「かきくけこ」を活用!か(過去、家族)き(季節)く(苦労話)け(健康)こ(子ども)

認知症の人と接するときには「気づく、わかる」をサポート。①手を振る(視覚)②名前を呼ぶ(聴覚)③目線を合わせ手を触れる(視覚と触覚)

メラビアンの法則によると、視覚(容姿・表情・態度)55%聴覚35%(口調・音量・速さ)話の内容7%の割合で伝わると言われ、内容よりも口調や表情が重要。

一番興味を引いたのが、会話のスピードが2倍以上にに聞こえている、会話の内容が理解出来ず、例えて言うなら外国人が周りで喋っているような状況に認知症の人は感じているというものでした。漫画ではわかりやすく、認知症の人の心境が描かれていて、なにか言われてる、怒ってるようだ、でもなんで怒ってるか分からないという状況や、話について行こうと思っても全くわからず、最後に「わかった?」といわれたのだけ聞き取れたのでとりあえず「わかった」と答えていました。言葉で説明、説得しようと思っても伝わらないのです。ではどうすればいいか。メラビアンの法則を意識して接することです。声のトーン、表情が内容より大事だということを常に意識したいものです。