『認知症の人がスッと落ち着く言葉がけ』
認知症の人は言い分を曲げないの認知症の脳が作り出した世界にいるから。認知症の人は自分が思っている世界が本当の世界なので、ご飯はさっき食べたとか、もう退職して働いてないとか、お風呂にしばらく入ってないとかいう否定をしても、受け入れません。認知症の人に現実、事実を伝えても納得しないのです。
そういう人にどう対応してきたか、実例を多く紹介しています。記憶を足していき人格となる世界(足し算)ではなく、記憶が失われていく世界(引き算)に合わせた対応を、と表現されています。
コウイチさんの事例は初期のデイサービス通い始めの誘い方から始まり、過ごし方から中期、後期と症状が進んだ認知症の方への対応の変化が書かれています。大変興味深く感じました。初期は何かおかしいという自覚症状やプライドはありますが、中期になると排泄の失敗、徘徊するようになり、後期には暴力、制御不能行動などを経て入院。穏やかな様子になるが、誰だかわからなくなる、言葉が出なくなり徐々に寝たきりになって亡くなるという経過でした。
また体に刻み込まれていることは忘れない、繰り返すと「体に刻み込まれた」ようになる事例も紹介されていました。
認知症の人と関わる三原則「おどかない」「追いつめない」「おびえない」~認知症の人ー家族ー介護職は互いに誰かの心理が反映する(p142-143)も忘れないでおきたいところです。